[2010年9月2日(VOL.43 NO.35) p.01]

アジア太平洋地域のがん死亡

過体重がリスク増と関連

〔ロンドン〕オスロ大学(ノルウェー・オスロ)生物統計学のChristine Parr博士らは,アジア太平洋地域の成人におけるBMIとがん死亡率との関連性を検討し,過体重と肥満の人は,標準体重の人よりがん死亡率が有意に高まるとの結果をLancet Oncology(2010; 11: 741-752)に発表した。

すべてのがんでBMIと関連

 近年,過体重や肥満は,いくつかのタイプのがんでは重要な危険因子として認識されるようになってきた。肥満とがんの関連についての研究は,主として欧米人を対象に行われてきたが,その結果が他の集団にも当てはまるか否かについては明らかにされていなかった。

 アジア諸国の多くでは,運動不足や高脂肪食の摂取などライフスタイルの欧米化により,肥満が急速に増加している。そのため,肥満ががんリスクに及ぼす影響がアジアで拡大しているが,そのことはほとんど知られていない。

 今回の研究では,アジア地域(中国,香港,台湾,日本,韓国,シンガポール,タイ)とオーストラリアおよびニュージーランドの成人42万4,519例を対象に,BMIとがん死亡率の関連性を検討した。Parr博士らは,APCSC(Asia Pacific Cohort Studies Collaboration)の39のコホート研究で得られたデータを分析した。

 追跡期間の中央値は4年であった。世界保健機関(WHO)の分類に従い,BMI 18.5未満を低体重,BMI 18.5~24.9を標準体重(対照),BMI 25~29.9を過体重,BMI 30以上を肥満とした。

 その結果,BMIが18.5を超えると,BMIとすべてのがんによる死亡リスク上昇との間に関連が認められ,BMIが5増加すると同リスクは9%上昇した(肺がんと上気道消化管がんを除く)。

アジア人の過体重を防ぐ対策を

 今回の結果から,がん死亡リスクが過体重群では標準体重群と比べて6%,肥満群では21%高いことがわかった(肺がんと上気道消化管がんを除く)。この結果は年齢,喫煙,飲酒による影響も考慮されたものである。

 また肥満群では標準体重群と比べて結腸直腸がん,乳がん(60歳以上の女性),卵巣がん,子宮頸がん,前立腺がん,白血病による死亡リスクが有意に高かった。

 さらに,同じBMI分類群の欧米人とアジア人のがん死亡リスクを比較しても,糖尿病や心血管疾患の場合とは異なり,両者間のリスクに明らかな差は認められなかった。

 Parr博士らは「肥満の蔓延によるがん死亡リスクの上昇を抑制することが重要だ。そのため,アジア人の過体重と肥満人口を減少させる戦略が求められている」と結論している。

 マンチェスター大学(マンチェスター)のAndrew Renehan博士は,同誌の付随論評(2010; 11: 704-705)で「今回の研究は保健政策上重要な意味を持っている」と強調している。一方で,今回の研究のリスク算出方法では,BMIの範囲内のどの時点で過体重による影響が表れ始めるのか具体的に説明されていない点を指摘。また,アジア人の多くでWHOが過体重のカットオフ値としているBMIが25以上に満たない場合でも,がんリスク増加の可能性があるとする仮説については,検証が必要だとしている。

 同博士はデータ収集法を標準化し,(1)リスクに影響を及ぼす因子(2)より広範なBMIデータの分類法(3)身体組成をより正確に測定できる他の人体計測指標(4)個体ごとの脂肪蓄積や発がんの複雑な相互作用に関する遺伝的差異を明らかにするアレル多型性の決定―を含めたさらなる研究が必要である」と結論付けている。


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