[2010年7月29日(VOL.43 NO.30) p.16]
高齢者の意図的な減量は有効
過去の有害説を否定
〔米ノースカロライナ州ウィンストンセーラム〕高齢者の体重減少は死亡リスクの上昇をもたらすと広く認識されているが,ウェイクフォレスト大学バプテスト医療センター(ウィンストンセーラム)のM. Kyla Shea博士らは「この説には根拠がない」と初めて否定の意を示した。詳細はJournal of Gerontology:Series A(2010; 65A: 519-525)に発表された。
意図的減量で死亡率半減
今回の研究以前に実施された,死亡率と体重減少との関連に注目した研究では,体重減少の背景にある種々の原因を見落としていた。そのためShea博士らは,より厳密なランダム化比較試験のデータを用いることにより,積極的に減量に取り組む高齢者では死亡リスクが上昇するという概念が正しいかどうか検討した。
今回の研究は,膝関節炎を有する高齢地域住民318例(平均年齢69±6歳,平均BMI 34±5,72%が女性)のデータを再解析したもので,被験者は“減量と身体活動が身体機能に及ぼす効果”を評価する目的で1990年代後期に行われた臨床試験の登録者である。初期の減量介入は96~98年の18か月間にわたり実施され,その期間に介入群の159例は積極的な減量を行い,体重は平均4.8kg減少した。一方,非介入群の159例では平均1.4kgの減少に留まった。
同博士らは被験者の8年後の生存状況を調べた。
その結果,減量を目的に身体活動あるいは食事を改善した介入群では15例死亡し,減量の努力をしなかった非介入群の30例と比べ,死亡数は半数であった。
同博士は「これはきわめて興味深い知見である。このデータは,高齢者の肥満関連の健康問題に取り組む際には,減量の推奨について懸念する必要がないことを示唆している」と述べている。
疫学研究からの誤解
この知見は,ベテランの老人病学者らにとって予期せぬものだった。
同大学Sticht加齢センターのStephen B. Kritchevsky所長は「医学界は長年にわたり,体重が減少した高齢者で死亡率が高いことを示す多数の疫学研究を支持してきた。そのため,高齢者では体重減少が予後不良を示す徴候としてしか認識されていなかった」とし,「これまで用いられてきたデータでは,体重減少の原因と減量の効果を分けて考えていなかった。つまり過去のデータで検討された体重減少は,他の健康問題によって生じた結果であり,意図的な減量の成果ではなかったと考えられる」と説明している。
同所長は,今回の被験者に,高齢者でよく見られるさまざまな健康問題が認められたことに言及。「対象の高齢者は地域社会で生活し,外出もでき,近隣の人々と同じように日常生活を送っている。研究開始時,全例が過体重で,しかも老化の徴候が認められた」と述べている。
高血圧や高コレステロール,高空腹時血糖値などを改善
Shea博士らが対象のうち最高齢者群(75歳以上)で減量の効果を評価したところ,体重が減少した若い被験者群(60歳以上)と同等の死亡率低減効果が認められたという。
Kritchevsky所長は「高齢者は減量により,高血圧や高コレステロール,高空腹時血糖値など複数の健康問題が改善されるようだ。しかし多くの医師らは,(以前の研究で示されている)死亡リスクを懸念して,高齢者に減量を勧めることに抵抗を感じている」との懸念を示している。
同所長は,今回の研究について「高齢者で蔓延する肥満に取り組むうえで,障壁ともなる数々の根拠のない懸念を解消するものだ」と見ている。
さらに「比較的規模の小さな研究であったため,ここで得られた結果を他の臨床試験でも確認する必要があるが,それでも意図的な減量が過度の死亡リスクにつながるわけではなく,むしろ死亡率を低下させうることを示すには十分である」と述べている。
今回の研究は米国立加齢研究所(NIA)の助成を受けた。
