[2010年7月22日(VOL.43 NO.29) p.56]

ブロッコリーが乳がんの幹細胞を抑制

含有化合物に予防・治療の可能性

〔米ミシガン州アナーバー〕ミシガン大学(アナーバー)薬学部製薬科学科のDuxin Sun准教授らは「ブロッコリーに含まれる化合物は,がん幹細胞を抑制し,乳がんの予防または治療に役立つ可能性がある」とClinical Cancer Research(2010; 16: 2580-2590)に発表した。

新たな腫瘍が発生せず

 同大学総合がんセンターの研究者であるSun准教授らは,マウスと細胞培養の実験で,ブロッコリーとブロッコリーの芽に含まれるスルフォラファンの作用を検討した。

 今回の研究では,乳がんのモデルマウスにブロッコリー抽出物から得られたさまざまな濃度のスルフォラファンを注入し,その後に腫瘍のがん幹細胞数を算定した。その結果,スルフォラファン投与後にがん幹細胞は大幅に減少したが,正常な細胞にはほとんど,または全く影響がなかった。

 さらに,スルフォラファンを投与したマウスのがん細胞では,増殖能が低下していた。また,ヒト乳がんの培養細胞にも同様の実験を行った結果,スルフォラファンによって,がん幹細胞が減少することが示された。

 同准教授は「スルフォラファンはがん幹細胞に標的を絞り死滅させることで,新たな腫瘍の増殖を予防することがわかった。これまでにも,スルフォラファンの抗がん作用が研究されてきたが,今回の研究では乳がん幹細胞が抑制されることを見出した。スルフォラファンおよびブロッコリー抽出物が,がんの予防および治療に役立つ可能性が示唆された」と述べている。

 現在の化学療法はがん幹細胞を標的としておらず,がんは再発または増殖する。そのため,がんのコントロールには,がん幹細胞を標的とすべきだと考えられている。

臨床試験を準備中

 同センターのMax S. Wicha所長は「今回の研究から,スルフォラファンと他の化合物を組み合わせることで,乳がん幹細胞を標的とした新しい治療法への可能性が示唆された。がん幹細胞を標的とする有効な治療法を開発することは,がんのアウトカム改善に不可欠である」と指摘している。

 今回の研究で使用されたスルフォラファンの濃度は,ブロッコリーまたはブロッコリーの芽を摂取することで得られる濃度よりも高かった。以前の研究から,ヒトはがんに影響を及ぼすうえで必要な濃度のスルフォラファンをブロッコリー抽出物から吸収することが可能だとされているが,副作用についてはわかっていない。ブロッコリー抽出物にはカプセルのサプリメントがあるが,含有濃度はさまざまであるという。

 また,ヒトでの臨床試験はまだ行われていないため,現時点では患者の食生活にスルフォラファンのサプリメントを追加することは推奨されていない。

 Sun准教授らは現在,スルフォラファンの抽出と保存方法の開発に取り組んでおり,この抽出物が乳がんの予防や治療法となるかどうか検証するための臨床試験の準備を進めている。

 米国がん協会(ACS)によると,米国では2010年の1年間に19万4,280人が乳がんの診断を受け,4万610人が死亡すると予測されている。


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