[2010年7月22日(VOL.43 NO.29) p.53]
甲状腺機能亢進症
若年成人の脳卒中リスクと関連
〔米テキサス州ダラス〕台北医科大学(台北)医務管理学のHerng-Ching Lin教授らは「甲状腺機能亢進症の若年成人では同機能が正常な者と比べ脳卒中リスクが44%高いことが示唆された」とStroke(2010; 41: 961)に発表した。同教授らは「若年成人で発症する虚血性脳卒中の原因を特定する際には,甲状腺機能を調べる必要があるのではないか」と述べている。
5年間の発症リスクが44%高い
研究責任者のLin教授は「原因不明の脳卒中は,若年者の虚血性脳卒中全体の3分の1~4分の1を占める。しかし,甲状腺機能亢進症は18~44歳人口における脳卒中危険因子の候補と考えられたことはこれまでなかった」と述べている。
甲状腺機能亢進症は一般的な内分泌機能障害で,患者は若年成人が多く,その有病率は世界人口の0.5~2%(200~50人に1人)と推計されている。発症すると甲状腺ホルモンが過剰に産生され,代謝が亢進して発汗,体重減少,下痢,いらいらなどの症状が現れる。
今回の前向き症例対照研究では,1998年1月1日~2001年11月31日に甲状腺機能亢進症と診断され,単独支払い者制を取る台湾の国営医療保険制度のもとで,治療を受けた若年成人3,176例と甲状腺疾患がなく年齢を一致させた対照群2万5,408例を5年間追跡し,虚血性脳卒中の発症を確認した。患者の平均年齢は32歳であった。
被験者計2万8,584例のうち,5年の追跡期間中に虚血性脳卒中を発症したのは全体で198例(0.7%),甲状腺機能亢進症群では31例(1%),対照群では167例(0.6%)であった。年齢,性,収入,居住地の都市化の程度,高血圧,糖尿病,心房細動(AF),コレステロール高値,冠動脈疾患,抗不整脈薬使用の有無などの因子を調整後,5年間の脳卒中発症リスクは,対照群と比べて甲状腺機能亢進症群で44%高かった。
若年患者ではデータが不足
今回の研究には,台湾の国民医療保険プログラムの大規模データベースの医療記録が用いられた。この保険には2007年時点で国民の98%が加入している。
Lin教授は「若年成人の甲状腺機能亢進症は,脳血管疾患に関係するさまざまな症候群または病態と関連する可能性がある。しかし,これまでの文献には症例報告や症例集積研究があるのみで,因果関係を証明することはできなかった」と述べている。
同教授によると,60歳超の高齢者では,甲状腺機能亢進症とAFが関連することがよく知られている。AFとは心拍の異常や非効率な拍動が起こる疾患で,脳卒中や心臓突然死を誘発する可能性がある。
同教授は「若年甲状腺機能亢進症患者の脳卒中リスクに関するデータは著しく欠如している」と指摘。さらに「今回の知見は,若年成人における甲状腺機能亢進症とその後の虚血性脳卒中リスクが関連することを示しており,今後,さらに詳細な検討を行うことで,この年齢層における脳卒中の原因解明に役立つと考えられる」と期待を寄せている。
