[2010年7月22日(VOL.43 NO.29) p.50]
妊娠中のストレスが出生児の喘息リスクを上昇
〔ボストン〕 妊娠中は,母子ともにストレスの影響を受けやすいが,Brigham and Women's病院(BWH)チャニング研究所内科のRosalind J. Wright助教授とハーバード大学(ともにボストン)の研究者らは,妊娠中のストレスが出生児の喘息リスクを高める可能性があるとAmerican Journal of Respiratory and Critical Care Medicine(2010; 182: 25-33)に発表した。
サイトカインのパターンに影響
筆頭研究者のWright助教授によると,以前の研究では妊娠中の母親のストレスが胎児の免疫系の発達に影響する可能性が示唆されていた。
今回の研究では,ストレスの多い環境下にいる母親から生まれた乳児と,ストレスの低い母親から生まれた乳児の臍帯血中の免疫機能マーカーが比較検討された。
被験者は,都市部在住の妊婦で,ほとんどが少数民族であった。そのうち20%が法定貧困レベルを下回っており,父親ないし妊娠中の母親に喘息またはアレルギーの既往歴があった。家庭(家庭内暴力を含む),地域(コミュニティーの暴力)での生活におけるさまざまなストレス因子について詳細に質問し,557家族から回答が得られた。
同助教授らは,出産時に採取した臍帯血から免疫細胞を分離して,多数の因子(粉塵,ゴキブリなどアレルギー源,ウイルス性および細菌性刺激物質)で刺激し,さまざまなサイトカインの産生を分析した。これは,環境に対して乳児の免疫がどのように反応するかの指標となる。
その結果,所定の刺激物質に対するサイトカインの放出パターンは,母親のストレスレベル(自己報告)によって異なることが示唆された。
同助教授は「ストレスの高い母親の胎盤で認められたサイトカインの産生パターンにより,出生児の免疫機能が確認できるが,胎児が成長すれば,喘息とアレルギーの発症リスクのマーカーとなるかもしれない」と説明している。
同助教授は今回の知見について「母親の心理的ストレスが児の免疫反応プログラミングに関与していることと,この影響が妊娠中から始まっていることを示唆している。今回検討した乳児が成長すれば,これらの因子が喘息とアレルギー発症にどのように関与しているか確認することができるだろう」と述べている。
今回の研究は米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)から助成を受けており,乳児が成長し,母親のストレスレベルが実際に喘息の発症に影響を及ぼすか否かを確認するまで続けられる。
